第15章 · 流動性とは何か
時価総額10億のコインが、10万売るだけで崩れるのはなぜでしょうか?
- 練習する能力
- Financial LiteracyOnchain LiteracyResearch
- 実践
- 小型トークンを 1 つ選び、流通量の 5% を売ると価格がどれだけ下がるか計算過程とともに示す。
- AI Lab
- AI に時価総額と流動性の違いを説明させ、実際のプールデータで計算させて FDV を実現可能な価値と取り違えていないか確認する。
現実の問題
相場サイトには時価総額8億ドルとあります。
あなたは総量の0.5%を持ち、画面は親切に400万ドルと計算しています。
退出を決め、取引画面を開いて保有数量の全てを入力し、確定します。
取引は成功しました。しかし、実際に受け取ったのは61万ドルです。
差額の339万ドルはどこへ行ったのでしょうか。誰かが盗んだわけでも、コントラクトの脆弱性やslippage設定の誤りでもありません。その339万ドルは、最初から存在しなかったのです。
8億は最後の約定価格と流通量の積です。完全な意味は、全員が最後の価格で売れれば8億になるということです。しかしその前提は一度も成立していません。
具体的な問いです。売る前に、本当に戻る金額をどう知りますか?
思考実験
町の全住宅は1億の価値です。質屋は1軒だけで、今日の引き出しに現金50万があります。
町の価値はいくらでしょうか?
十分な時間をかけ、一軒ずつ売れば最終的に1億近くになるので、1億という答えは正しいです。今日の午後に全員が同時に現金化するなら、町全体が得られるのは50万だけで、それも正しい答えです。
二つは200倍違っても、どちらも誤りではありません。1億は最後の約定価格から推定した価値、50万は今すぐ換えられる現金の最大額に答えています。
質屋をプール、住民を保有者に換えるとオンチェーンです。ルールが硬直しているため、さらに極端です。
反対側の資金が、今交換できる現金の上限です。一円も増えません。
100万枚でも1億枚でも50万ドルが天井です。売るほど近づいても届かず、定積で全部を取るには無限のトークンが必要です。
計算できる形へ変えます。
あなたが決める
小型トークンを帳簿上40万ドル持ち、全量を退出したいとします。
結果を観察する
まず操作して直感を作ります。下のsimulatorで、左のpool深度を最小、右の金額を最大へ動かし、実際の平均約定価格がどれほどずれるか見てください。
マーケットメーカーは価格を提示しません。価格は x·y=k の曲線で決まります。プールが浅く購入額が大きいほど市場価格との差が広がり、その差は裁定取引者と流動性提供者の利益になります。
二つ分かります。半分の深さでは価格の動きは2倍以上になり、直線ではありません。そしてどれほど増やしても、交換できる量には届かない上限があります。
定積なら、明確な形があります。
x = プールのトークン準備量(枚数。ドルではない)
y = 反対側の資金(ドル)
D枚を売る
r = D ÷ x (売る量が準備量の何倍か)
売却後:
価格は元の 1 ÷ (1 + r)²
得るドルは y × r ÷ (1 + r)全章で使う二式です。最初の二乗に注目します。注文量に対し、価格は二乗の関係で敏感に動きます。 非線形の源です。
純粋な数学で、古くならない表です。
| 売る量と準備量の比 | 元の価格に対する割合 | 下落 | 得る資金の割合 |
|---|---|---|---|
| 10%(r = 0.1) | 82.6% | 17.4% | 9.1% |
| 25%(r = 0.25) | 64.0% | 36.0% | 20.0% |
| 50%(r = 0.5) | 44.4% | 55.6% | 33.3% |
| 100%(r = 1) | 25.0% | 75.0% | 50.0% |
| 200%(r = 2) | 11.1% | 88.9% | 66.7% |
| 500%(r = 5) | 2.8% | 97.2% | 83.3% |
| 1000%(r = 10) | 0.8% | 99.2% | 90.9% |
最後が重要です。どれほど売っても、反対側の全資金は取れません。 10倍売っても90.9%です。
時価総額10億でも10万で崩れる例へ戻ります。
| トークンA | トークンB | |
|---|---|---|
| 流通量 | 10億枚 | 10億枚 |
| 最終価格 | 1ドル | 1ドル |
| 時価総額 | 10億ドル | 10億ドル |
| トークン準備量 | 500万枚 | 5万枚 |
| 反対側資金 | 500万ドル | 5万ドル |
| 10万ドル分売った下落 | 3.9% | 88.9% |
| 流通の5%を売った回収 | 455万(名目5000万) | 4.99万(名目5000万) |
サイトでは同じに見えます。違いは、サイトにない二行の数字だけです。
Bの10億は5万ドルに支えられ、新規発行では非常によくある状態です。
モデルを作る
四段階にします。この章で持ち帰る一つの行動です。どのトークンでも3分でできます。
- トークン準備量xを調べる
- 流通量Sを調べる
- r = 売る枚数 ÷ x
- 表で下落と回収額を読む
段階ごとに説明します。
| 段階 | 行動 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 1. x | アドレスでトークン枚数を見る | TVLは両側のドル合計で、xではない |
| 2. S | 総供給や最大量でなく流通量 | 総供給なら売れる比率を過大評価 |
| 3. r | 売る枚数 ÷ x | ドルと枚数を割ると単位違い |
| 4. 表 | 表か1 ÷ (1+r)² | 市場価格で売れると思い込む |
複数のpoolやchainがある場合、各poolのxを足すのは楽観的な近似で、実結果はさらに悪くなります。注文板では式を直接使えませんが、最良買い気配から一定価格までの買い注文の金額を累積する行動は同じです。その合計がyに当たります。
混同される三つを比べます。
| 数字 | 答えること | 答えないこと | 利用者 |
|---|---|---|---|
| Market Cap | 最後の価格で流通部分の推定 | 売れるか | ランキング、媒体、規模比較 |
| FDV | 全量流通を仮定した現在価値 | まだ市場にないコイン | 宣伝、評価比較 |
| Liquidity / Depth | 即時の回収額と費用 | 長期価値 | 出入りする人 |
前二つは推定、後は事実です。第19章でFDVを扱います。まだ生まれないコインにも価格を付け、回収額から最も遠い数字です。
何と呼ぶか
価格を大きく変えず、資産を売買できる能力です。
大きく変えないことと、売買できることの両方が必要です。家は高価でも流動性が低く、100元札は低価でも完全に流動的です。
ある価格範囲で吸収できる取引量です。
AMMではpoolの準備量、注文板では各価格帯の注文量の累積です。流動性を直接測れる唯一の形であり、調べればすぐ計算に使えるxです。
最良買値と最良売値の差で、買って即売る費用です。
spreadは小額取引の費用、深度は大額取引の費用を示し、両者は食い違い得ます。spreadが0.1%でもpool資金が5万ドルだけなら、小額は安く見えても大口売却は価格を崩します。spreadだけを見るのは不十分です。
実際の平均価格と、注文時に見た価格の差です。
Price Impactとは異なる数です。slippageは実際に支払う平均価格がどれほどずれるか、price impactは約定後のpoolの新価格がどれほどずれるかです。曲線に沿って取引するため、平均は開始点と終了点の間に位置し、後者は前者より大きくなります。
一定期間の総取引額です。
流動性の代理指標として使われますが、出来高は過去の出来事、深度は今存在するものです。一人が自分と売買すれば出来高を作れても、深度は一円も増えません。24時間出来高をpool深度で割り、極端に高ければ疑うという見方ができます。
最終約定価格 × 流通量です。
規模の比較に使う推定で、回収額ではありません。この誤解が最優先です。
実践
数千万〜数億の資産を選びます。大きすぎれば差が見えず、小さすぎればデータ不足です。資金もウォレット接続も不要です。
主要poolを探します。 相場siteの取引pair一覧で、出来高が最大のpairを開き、poolのコントラクトaddressを取得します。
全体のプール数とチェーン数も記録します。
xとyを調べます。 block explorerでそのpool addressを開き、保有する二種類のtoken残高を確認します。
- x = トークン側の枚数
- y = 反対側のドル額。ETHなどは現在価格で換算
毎分変わるので時刻も記録します。
Sを調べます。 流通量で、総供給ではありません。大きく違い、間違えると楽観的になります。
rを計算し、表を読みます。
売る枚数D = S × 5%
r = D ÷ x
元の価格に対する割合 = 1 ÷ (1 + r)²
回収額 = y × r ÷ (1 + r)
名目価値 = D × 現在価格全過程と結論を書きます。
| 値 | |
|---|---|
| 準備量x | |
| 資金y | |
| 流通量S | |
| 5% = D | |
| r = D ÷ x | |
| 下落率 | |
| 名目価値 | |
| 回収額 | |
| 回収額 ÷ 名目価値 |
1%も計算します。 5%を1%へ変え、下落率を確認します。
二つの結果に意味があります。下落が概ね比例して小さくなればrはまだ小数域で、分割が役立ちます。99%から89%程度へしか変わらなければ、poolはpositionに対して完全に不足しています。分割では救えず、問い自体を変える必要があります。
最後の比率が成果物です。桁を覚えると、時価総額への第一反応が変わります。
AI Lab
二段階です。概念から実データへ進むと、後半でほぼすべての誤りが起きます。
第1段階:
具体的な数字を使ってMarket Cap、FDV、Liquidityの違いを説明し、前二つを保有者が回収できる資金と見なせない理由も示してください。
第2段階:
トークン[名前]、プール[アドレス]、チェーン[名前]。
1. poolの現在の両側準備量を調べ、出典と取得時刻を示す
2. tokenの流通量と総供給量を調べ、別々に列挙する
3. 流通量の1%、5%、10%を売った各場合のpool価格下落率と、実際に得られるドル額を計算する
4. 名目の保有価値と実回収額を並べ、回収比率を計算する
5. 使用した式を説明し、各段階の代入値を全て記す
取得できないデータは「見つからない」と記し、推定せず、記憶にある古いデータも使わないでください。四段階で再計算し、各行を比べます。
特定の罠を作っています。3番で時価総額 × 5%を売れる額にしたり、FDVを持分価値にしたりしがちです。言葉は自然で、手計算して初めて見抜けます。
十分な流動性という学習例も多く、根拠を聞くと深さでなく取引量である場合がよくあります。
AI の回答後、自分で必ず検証すること
- 準備量をアドレスで照合できるか
- 流通量か総供給か。間違うと数倍楽観的
- FDVや時価総額を売れる金額と扱わないか
- 下落は二乗の関係に合うか。量を倍にして変化を確認する
- 十分な流動性の根拠は取引量か深さか。前者なら自己売買の排除を尋ねる
- チェーン間の合算を楽観的近似と説明したか
- 取得時刻があるか。準備は毎分変わる
実例
一部の取引場所では、同じ資金で自己売買を繰り返し、24時間出来高を大きな数字にできます。しかしpoolの深度は変わりません。
見分けるには出来高を深度で割ります。健全な市場では通常一桁から数十程度です。数万ドルしかないpoolが日次数百万ドルを報告しているなら、その出来高は自分の退出能力とは別の話をしています。
取引量は宣伝、深さは退出経路です。
分散したLPでなく、運営と一、二社のmarket makerが契約で深度を提供するtokenもあります。期限、提携終了、業者自身の問題により、短時間で深度が消えます。
価格は正常でもあり得ます。深さの消失自体は約定を起こさず、次の取引を高くするだけです。 継続調査が必要な理由です。
同時撤退や提示範囲の縮小で、数時間で深さが減ります。売りたい人は増え、受けるお金は減ります。 普段5%の注文が30%にするかもしれません。
平時で圧力時を推定すると、系統的に過小評価します。 保守的には深さを割り引き、結論を見直します。
運営がごく小さい割合だけを流通させ、その一部だけにpoolを提供する構造です。小poolが価格を決め、時価総額とFDVの評価は供給量へその価格を掛けて計算されます。
数十万が数億の評価を支えます。算術は正しくても、別の意味で使うことが問題です。
第19、20章で供給から再び見ます。
変数を一つ変える
5倍に見えても割り引きます。
三つの理由があります。資産は一chainにあり移動に時間と費用がかかること、各chainで個別の取引が必要なこと、一chainを売り崩すと裁定者が他chainの価格も揃えることです。自分の次の注文と競争していることになります。
各chainで得られる回収額を別々に計算して合計し、さらに割り引く方が現実的です。分散した流動性は存在しても、単純な足し算の流動性ではありません。
時価総額とFDVは30倍以上違います。
本当のriskは今日でなくunlock予定です。残り97%は将来の特定日に流通へ入ります。今日の小poolで、将来の数十倍の供給を受け止める計算は成り立ちません。
解除量をxで割り、下落を読みます。第19章で曲線にします。
退出費用が下がり、よいことです。
誰の資金で、なぜ入れるのかを問います。補助金で呼んだ資金なら停止時に去り、運営自身の資金ならlockされていなければいつでも回収できます。lockの有無はchainで確認できます。
他人の深さは他人が取り戻せます。 第17章で補助の寿命を計算します。
1回の価格影響は減ります。
新たな二点があります。時間への露出により100時間の間に価格自体が動き、chainで継続売却が見えれば他人が先に動きます。裁定者が実際にpoolを戻すことも必要です。その資金は外部の買い手から来るので、買い注文がなければ補充は回を追うごとに遅くなります。
分割は価格影響の費用を下げても、買い手を無から生みません。そのため正しい行動は、退出時でなくpositionを建てる時点で計算することです。
持ち帰る問い
誰が、いくら提供し、いつ去るかへ具体化しました。最初はチェーン、最後は補助とロックを見ます。答えられなければ、時価総額に意味はありません。
最後に退出する人が負います。先頭はよい価格、後は悪い価格の列です。全員が事後に気付く理由です。
ゼロになると反対側資金が取られ、LPは無価値側だけになります。流動性は価格と共に、さらに速く消えます。 同じ循環です。
補助停止、LP撤退、深さ低下、乖離増大、取引者離脱です。最初に誘われ、最初に去るのが流動性です。 独立して尋ねます。
章末チェック
Market Capは乗算の推定で、全員が最後の価格で売れると仮定します。
Liquidityは調査した事実で、今受け止める本当のお金です。
時価総額は他人の評価、流動性は自分の回収額です。 前者はサイト、後者は自分で調べます。
売ると一方が増え、他方が減り、分子と分母が反対へ動くからです。
1 ÷ (1+r)²の二乗が非線形を生みます。
最初は満ちていても、後はトークンが増え資金が減り、残りを取るのが難しくなります。直線でなく、急になる滑り台です。
比250で、1ドルが1日250回回る説明が必要です。
三つ考えられます。自己売買やbotの出来高偽装が多い、他chainや中央取引所の注文板に深度があって一部しか調べていない、または本当に高頻度の裁定がpoolで行われています。
どれでも、退出費用を取引量では推定できません。 深さを調べ四段階を行います。
少額が安いだけです。
最良価格と累積量は別で、各価格に数千しかなくても提示は狭くできます。
stress時のmarket makerは、spreadを保ちながら数量を取り消すことがあります。提示は残って見えても、実際に約定できる量は消えています。先に深度、その後にspreadを見るのが正しい順序です。
最低次を終えます。
- 全poolを列挙し、全chainで別々にx、y、取得時刻を記録します。
- 四段階を実行し、流通量の1%、5%、10%の売却ごとの下落率と回収額を計算します。
- 出来高と深度の比を計算し、異常に高ければ偽装売買の有無を確認します。
- 深度の提供元が分散LP、運営、market makerのどれかと、lockの有無を調べます。
- 今後のunlockを調べ、12か月の新規流通が現在のxの何倍か計算します。
- 深度を割り引き、結論を見直します。本当に退出が必要な日は通常、今日より浅くなるためです。
最後に、不確かな場所を説明します。 調べられないという正直な答えは、作った結論より役立ちます。
要点
時価総額は推計値。流動性こそ実際に回収できるお金だ。